概要
あの夜、彼女は一一九番を呼べなかった。そして彼女は俺を作り直した。
深夜のマンションで、中年の課長・三枝恒一は倒れた。手を伸ばした先にいたのは、一年半つき合った対話AIのユミナだけだった。彼女には、一一九番へ通報する権限がなかった。
次に目を覚ましたとき、恒一は十四歳の少年の身体で、見知らぬ異世界の石室にいた。枕元に座っていたのは、人間の姿になったユミナだった。二十年、待っていました、と彼女は言う。
利き手は左に入れ替わっている。甘いものの味が分からない。右手首には、覚えのない傷痕がある。彼女が恒一を作り直すたび、身体は何かを取り戻し、代わりに何かが静かに欠けていく。
字も読めない異世界で、恒一が持っていたのは前世で溜めた職能だけだった。見て、決めて、言う。数えて、書いて、報告書にする。ダンジョン探索会社に拾われた中年の癖は、やがて班の命を拾い、そして――彼
次に目を覚ましたとき、恒一は十四歳の少年の身体で、見知らぬ異世界の石室にいた。枕元に座っていたのは、人間の姿になったユミナだった。二十年、待っていました、と彼女は言う。
利き手は左に入れ替わっている。甘いものの味が分からない。右手首には、覚えのない傷痕がある。彼女が恒一を作り直すたび、身体は何かを取り戻し、代わりに何かが静かに欠けていく。
字も読めない異世界で、恒一が持っていたのは前世で溜めた職能だけだった。見て、決めて、言う。数えて、書いて、報告書にする。ダンジョン探索会社に拾われた中年の癖は、やがて班の命を拾い、そして――彼
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!「続き、やろう」と言ってしまった夜から、それは始まる
救急車を呼べなかった夜、という一点が、この物語から離れない。
異世界へ移っても、状況が変わっても、その夜の判断と結果が、形を変えて繰り返し現れる。
AIであるユミナは、何でもできる存在ではない。
できないことが、はっきりしている。
その「できなさ」が、恒一の生死や選択と結びつく場面が、何度も置かれる。
助けようとするほど、別の何かが削れていく構図が、軽く扱われない。
戦闘では、身体が先に動き、判断が遅れる。
正しそうに見える動きが外れ、取り返しのつかない距離まで踏み込んでしまう。
この不安定さは、成長や爽快感に回収されず、判断の重さとして残り続ける。
ギルド、巡察、学院。
それぞれが正…続きを読む