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鋏池穏美


以下の文章は、昨年末にネット掲示板に投稿され、すぐに削除されたものです。※スクショして転載したものですが、問題があるようでしたら削除します。

詳細が分かる方がいらっしゃいましたら、ご連絡お待ちしております。

2026年1月2日

鋏池穏美



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名前:祖父母の家 投稿日:2025/12/30(火) 23:41:55 ID:Ab1kL2E70


これは私と姉が小学生だった頃、祖父母の家で体験したお話です。※特定できないよう、地名は伏字にさせていただきました。


今から十五年前の二〇一〇年。当時、私は小学五年で、姉は六年。姉は好奇心旺盛な私にいつも付き合ってくれ、大好きでした。


祖父母の家は■■県の■■町に属する■■地区と呼ばれる山村。町から車で一時間もかかりますし、お店なんて一つもない場所。正直、夏休み恒例の祖父母宅への訪問が楽しかったのは、小学校低学年までだったでしょうか。


遊ぶ場所もなく、ただただ祖父母宅で過ごす一週間。


その年、ヒマに耐えかねた私は、姉にこう提案しました。「お山の先に行ってみない?」と。姉は私の言葉に困った顔をし、「行っちゃダメって言われてるでしょ」と窘めるように言いました。


──お山の先にある黒い鳥居、仏滅の日はくぐってはならん。


そう祖父母に口を酸っぱくして言われていたお山の先。姉は怖がっていましたが、私は興味津々。祖父母によれば、仏滅の日にお山の先、黒い鳥居をくぐると帰ってこれなくなるとのこと。けれど私はそんな迷信、全くといっていいほど信じていませんでした。スマホが普及し、調べればなんでも分かる時代。神や仏や幽霊なんて、そんなの馬鹿げてる。なんなら私が帰ってきて、祖父母に「帰ってこれたよ」と言ってやろうとさえ思っていました。


ちょうどその日は八月十九日の仏滅。私は嫌がる姉の手を引き、祖父母宅の裏山、お山の先を目指しました。


しばらくして見えたのは、黒い鳥居。実は仏滅以外の日に何度か訪れたことがあったので、場所は分かっていました。姉は「本当にくぐるの?」「やめようよ」と怖がっていましたが、私は「いいからいいから」と言って、姉の手を引っ張りました。その瞬間、ふたりして足元の小石につまづき、体勢を崩した姉だけが鳥居の向こうに。


──嬉しや嬉し、祝いの品じゃ。


そう嗄れた男性の声が聞こえたかと思うと、鳥居の向こう、倒れた姉にわらわらと人が群がりました。先程まで誰もいなかったはずなのに、わらわらと。姉は手足を押さえつけられ、泣き叫んでいます。


──お前もこっちにきんさい。


鳥居の向こう、和服姿の男性が私に向けて手招きします。まるで時代劇で見たことのあるような古い和服。


──今日は特別。祝いの日。何人でもこっちにご招待。おんがらがいぐねと一つになりましょう。


鳥居の向こう、洋服を着た女性が私に手招きします。この女性が来ている服は、二年前に流行ったブランド物。

私は「お姉ちゃんを離してください!」と泣きながら叫びました。その瞬間、姉の体がどろどろに溶けました。まるで蝋燭の蝋が溶けるように、どろどろと。


──お前も見たぞ、それ見たぞ。

──嬉しや嬉し、祝いの品じゃ。

──鳥居をくぐればすぐ一つ。逃げても逃げてもどこまでも。

──おんがらがいぐねと一緒に生きましょう。

──今日は仏滅。祝いの日。さあさどろどろ、どろどろと。


私は逃げ出しました。気付けば祖父母の家で、私が見聞きしたことを捲し立てるように祖父母に伝えました。けれど祖父母は「どうしようもない」とだけ。その後、両親が警察に通報しましたが、行方不明として処理されました。


それからです。ずっと誰かに見られている気がするのは。


調べて分かったのは、東北地方に伝わる「おんがらがいぐね」という怪異の名前だけでした。いまも耳に残っているのは、「今日は仏滅。祝いの日」という言葉です。仏滅は私たちにとっては不吉な日ですが、怪異にとっては──。


この文章を書いている間も、視線が消えません。あれから十五年、私はいつ、どろどろにされてしまうのでしょうか。


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