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「性別違和」と、短編「花と水ぶくれ」

「花と水ぶくれ」
この物語は、性別違和の物語。
ただしどの立場からの違和なのかを、明確にするつもりはありませんでした。
性別違和という言葉は、しばしば「自分は何者か」という自己認識の問題として語られます。
けれど私にとってそれは、もっと身体に近い、説明しづらい感覚でした。
自分がどう思っているかとは関係なく、身体が勝手に変わっていくこと。
社会や家族が、その変化を前提に動き出してしまうこと。
拒んでいるはずなのに、なぜか「自分で選んだこと」にされてしまうこと。
その違和感は、怒りや悲しみとして噴き出すよりも先に、匂いや感触、気持ち悪さとして立ち上がってきます。
それをそのまま言葉にしようとすると、説明的になりすぎたり、立場の表明になってしまったりして、かえって遠くなる気がしました。
だからこの物語では、花が咲き、蜜が垂れ、
グロテスクな行為が行われ、最後に卵が産まれるというものにしました。
どれも象徴ではありますが、意味として整理しきれるものでもありません。
ただ、「そうなってしまう身体」の感覚を、そのまま置いておきたかったのです。
この物語に正しい読み方はありません。
性別の話として読むこともできるし、家族の話、身体の話、あるいはもっと別の現実の比喩として読むこともできるでしょう。
ただ一つだけ確かなのは、この物語が描いているのは「望んでいない変化が、静かに完了してしまう瞬間」だということです。

花と水ぶくれ
https://kakuyomu.jp/works/822139841832764034

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