その画家が描くは何ぞ

辻堂冬梧の顔には痣がある。そしてその痣は――絵や写真すらも、侵食していく。故に彼の姿は、写真にも絵にも残らなかった。
そんな彼が訪れた場所は、景中月古という画家のところであった。何としても軍人としての姿を残したい彼にとっては、一縷の望みともいえる。
しかしながら、結果は同じであった。そして月古は冬梧に言うのだ。「その痣の正体を知らねばならない」と。
その流れで、冬梧は月古の仕事を手伝うことになる。

不可思議な空気の漂う中、確かな筆致で描かれるのは人の因業である。
浮かび上がった因業は、当然ながら当人へと帰っていくものだろう。
では、彼らは。浮かび上がった因業の幕引きは如何に。
いつか痣の謎は解かれるのだろう。
彼らは数多の因業に出会うのだろう。
そんな期待をしたくなる作品であり、すっと染み入るように終わる短編でもある。
是非、ご一読ください。