身の丈
香織
身の丈
不意に身体が誰かに引っ張られたみたいに、もしくは何かにぶつかったみたいにして、うしろ側に倒れ込んだ。すると、黒いモヤの様なものが端からゆっくりと沸き出て視界を狭めて行く、それと同時にまるで水の中に沈んでいく様な喉に息が詰まる不愉快さを感じた私は、なんとかしてそこから抜け出そうとありもしないモヤを振り払おうと両手を振るってみたがモヤは晴れるどころかどんどんと視界を侵食しながらかき回した味噌汁の様に濃ゆさを増すばかりだった。
さっきまで、バタバタと忙しなく動いていた腕と足の自由が効かなくなっていた。そして、聞こえていたはずの音も風に流される雲の様に遠のいて行くのが分かる。そして、身体が芯の底から冷えて行くのも感じる。だが、誰も助けてはくれない。
皆んな私に嫌気が差して離れていってしまったから、そして助けになってくれるだろう両親はもう此処にもいない、何処にもいない。
それなのに私は、安堵した。なぜか、それは自分の身の丈にあった無様な醜態を晒す死に方をようやく迎えれるからだ。 こんな事を言う様な人間《私》は、狂っているのかも知れない、だがそれで良かった。 真っ当で正常な生き方など到底私には難しく出来そうに無かったからだ。だから、安心した。
身の丈 香織 @si-ga-nn
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