第3話

 もう数日で新たな年を迎える今日の昼間。


 死者を視て、話せるという、ある意味特技を生かしてオカルトライターをしている私は、「新年・パワースポット特集」の取材の為に向かった教会でミサに参加していた。

 日頃から信者に大切にされているのだろう、こじんまりとしているが、気持ちのいい教会だった。成程、パワースポットと言いたくなるような空気感だ。

 やがて、讃美歌が始まった。彼があの日聴かせてくれたあの曲だ。立ち上がった信者の中にいつの間にか交る小柄な金髪に気付く。


 ――彼だ。


 沢山の歌声の中から、あの澄んだ声が耳に届く。伸びやかで優しく繊細な、あの時と変わらない響きに、懐かしさが込み上げる。

 不思議な色の瞳がちらりと此方に向いた。


『楽しんでる?』


 歌声に重なった問いに頷くと、


『そう。けど、君の話を聞くのはもっと後!』


 私の初めての友人の笑顔が、歌声に解けた。



 次に彼が私を訊ねてくるのは、いつだろう。

 十年後? 二十年後?

 それとも、私が肉体を失う時だろうか?


 その時、どれだけの想いを彼に聞かせることが出来るだろう。楽しさも嬉しさも、寂しさも、時には怒りだって。私がこれ迄得たものを、彼はどんな顔で聞いてくれるだろう。


 だから私はこれからもこの仕事を続けるのだ。


 私の、生者の、死者の、沢山の心を知るために。

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エッグノッグの歌声 遠部右喬 @SnowChildA

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