最終話 勇気

 カゲロウは、静かに「見守る」という選択をしました。

 それは、子どもたちが持つ「変わっていく力」に、自分自身のすべてを託すという、とても勇気のいる決断でした。


 最初の一歩。それは、自分を信じた者だけが踏み出せる、確かな一歩です。

 その一歩のなかには、これから先に続く千歩ぶんの「まだ見ぬ景色」が詰まっています。

 未来がどうなるかなんて、誰にもわかりません。


 けれど、カゲロウは知ったのです。「わからない」からこそ、進む価値があるのだということを。もし結末がすべて決まっていたら、今日という日はただの写し絵になってしまいます。


 本当の答えは、いつも自分の心の奥底に隠れています。

 他の誰かにはただの小石に見えても、あなたにしか見えないその「輝きの断片」を宝物に変えられるのは、あなた自身が踏み出すその足跡だけなのです。


 カゲロウは、木陰に溶けるようにして、静かに微笑みました。

 彼の影はもう、誰かを追いかけたりはしません。

 ただ、新しい風が吹くたびに、子どもたちの背中をそっと押し続けることでしょう。



 君たちが選ぶ、まだ誰も見たことのない明日を信じて。



 どんな一歩でも、君自身の心に輝く宝物を見つける旅になることを、そっと願っているよ。

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カゲロウと芽吹きの世界 イソトマ @omiso_senpai

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