第4話 答え

 カゲロウが公園へと戻ってきたとき、広場はまだ薄い迷いの霧に包まれていました。

 子どもたちは自分の足元を見つめたまま動けず、誰かの影を追いかけるのに疲れて、小さな肩を落としていました。

 カゲロウはそっと、子どもたちの輪の中に歩み寄りました。

 彼はもう、未来を切り取る「四角い枠」を作りません。


 代わりに、芽吹きの世界で見てきた無限のきらめきを胸いっぱいに吸い込み、子どもたちの背中に向かって、ふうっと静かに息を吹きかけました。


 それは、春の陽だまりのような温かい息吹でした。

「……あ」 最初に顔を上げた男の子は、不思議なことに、もう胸がちりちりと痛みません。

 あの子は、遠くのゴールを目指して走っている。

 自分は、足元のボールと仲良くなりたくてここにいる。「進んでいる方向が、ただ違うだけなんだ。どちらも大切な道なんだ」


 その気づきは虹のように、子どもたちの心へ広がっていきました。

 女の子も、自分の影が自分自身の足元で誇らしげに揺れているのを見つけました。

「ねえ、一緒に遊ぼう」 誰かが上げた声は、もう誰かを試すような鋭いものではありませんでした。

 広場には笑顔が戻りました。それは、「今、ここにいること」を喜ぶ自由な声でした。


 広場の中央にある噴水からは、水滴がキラキラと弾け飛んでいます。

 どのしずくも空を飛んでいるその瞬間、世界で一番美しく光っていました。

 しずくが水面に跳ねる音と、子どもたちの笑い声が混ざり合い、新しい明日のリズムを奏でていました。


 カゲロウは、その光景を木陰から静かに見守っていました。彼の胸の奥には、何よりも温かな「答え」が灯っていました。

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