4 木こり、冒険者に転職する
「――ということがあって」
俺はイノシシの死体を持って、ギルドハウスを訪れていた。モンスターを討伐すれば、本職の冒険者でなくても報酬がもらえるからである。
しかし、どういうわけか、受付嬢の反応は鈍かった。
「『烈勇団』さんからの報告は入ってないですけどね」
木こりに助けられたのを恥だとでも思っているんだろう。リアムたちはギルドへの報告どころか、俺に礼を言うことさえしていなかった。
ギルドハウスの中には、ラウンジが設置されている。そこでは冒険者たちが集まって、さまざまな話題について議論を交わしていた。次に受けるクエストのこと、募集する新メンバーのこと、そして場違いな来訪者のこと。
「木こりがアーマードボアに勝てるわけないだろ」
「Aランクモンスターだもんな」
「病死したやつでも拾ったんだろうな」
冒険者たちの陰口で、ようやく受付嬢の態度に納得がいった。報酬欲しさに嘘をついていると思われているのだ。
「本当なんだ。泉に斧を落としたら、女神様が金の斧をくれて、そいつが役に立ったんだ」
「金は柔らかいので武器には不向きですが」
より詳しい説明をしたはずなのに、受付嬢はますます疑いの目を向けてきた。
「木こりはそんなことも知らねえのかよ」
ラウンジの冒険者たちは聞こえよがしに笑い声を浴びせてきた。
「金の斧っていうのは、素材のことじゃないんじゃないかしら?」
俺の後ろで順番待ちをしていた少女は異論を挟んできた。
ただ一人、味方をしてくれたのだ。
「〝沈黙は金〟とかって言うでしょ? 金は一番のものって意味でも使われるのよ。だから、金の斧っていうのは一番の斧ってことなんじゃないかしら」
女神様がくれたことやイノシシを真っ二つにできたことを考えれば、少女の説が正しいように思える。
そんな俺とは違って、受付嬢はまだ半信半疑という様子だった。しかし、「そういうことでしたら……」と報酬の用意を始めていた。
「誰だあいつ?」
「バカ。エラだろ」
「あ、〝
異名があるということは、優秀な冒険者に違いない。まだ十代後半といったところだろうに大したものである。
「ありがとう。助かったよ」
「別にいいわ。いつまでもカウンターを占拠されたら迷惑だもの」
エラと呼ばれた少女はとげとげしく答えてきた。さっき受付嬢が引き下がったのは、信頼からではなく恐怖からだったのかもしれない。
さらにエラは、嫌味に続いて命令まで口にしてきた。
「あなた、冒険者になりなさい」
次の更新予定
毎日 18:22 予定は変更される可能性があります
木こりの成り上がり~女神のくれた「金の斧」は「世界一の斧」という意味だった件~ 蟹場たらば @kanibataraba
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。木こりの成り上がり~女神のくれた「金の斧」は「世界一の斧」という意味だった件~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます