義母の訃報を聞いて山間の村々からも
沢山の弔問客が訪れた。連合いを亡くした
義父が静かに、気丈に葬儀の場を仕切る。
弔問客が帰った、その晩のこと。
玄関の呼び鈴が鳴る。
時刻はもう真夜中になる。遠くの村から
態々、御参りに来てくれたのかも知れぬと
玄関に出てみると、そこに居たのは
襤褸を纏った小柄な老婆。
小さな声で何かを呟くが、よく聞こうと
近寄ると…途轍もない異臭に思わず
たじろぐ。短髪で、まん丸の目玉が炯々と
輝く薄気味の悪いその老婆は、棺の中の
義母の遺体に顔を近づけてて行き…。
この不思議な譚のラストには、思わず
涙するだろう。
はっと息を呑む様な、その瞬間にも
嘗ての温かさは 貌 を得て現れるもの。
心温まる 真夜中のお弔い である。