年末コメディの正解。全裸とヘルメットと「良いお年を」。
- ★★★ Excellent!!!
恒例の志乃亜サクさま作品、連作のサンタさんに続く一編です。
こういう日常と非日常の境目を、軽やかに踏み越えるのが本当に上手なのです。
年末の大掃除という誰もが経験する題材を軸に、テンポのいい掛け合いと脱力系のギャグが畳みかけられ、思わず笑ってしまいます。
関西弁の侵入者、もんまりのキャラクター造形がとにかく強く、会話のリズムだけでするりと締めにたどり着いている。
それでいて、この作品が気持ちいいのは、笑いっぱなしで終わらないところ。
部屋はほとんど片付かないのに、読後には不思議と心が整っています。
年の終わりの少しの寂しさや、誰かと過ごした時間の余韻が、さりげなく残されます。
どれも馬鹿馬鹿しい出来事のはずなのに、「良いお年を」がちゃんと胸に届くのが、ずるいです。
そして、コメント欄まで含めて一作なのも、この連作の楽しさ。
読後はぜひ、そちらも覗いてほしいです。
年末に読むのに、これ以上ちょうどいい短編はなかなかありません。
もしかすると奥様にトイレで小説を書いているのをチクリと咎められたかも?
笑って、少しだけあたたかくなりたい人におすすめです。