第2話続:警察が駆けつけ
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私の絶叫を聞きつけた隣人が通報したのだろう。間もなく、けたたましいサイレンの音が近づき、家の前で止まった。
制服の警官たちと鑑識らしき私服の男たちが、すぐに狭い浴室になだれ込んできた。彼らは蝋燭の異様な光景と、浴槽の中の現実を前に、一瞬言葉を失った。すぐにデジタルカメラのシャッター音と、無線での報告の声が響き渡る。
私は座り込んだまま、ただ呆然と、妻の冷たいコンクリートの棺を見つめていた。
鑑識が慎重に浴槽の周りを調べ始める中、初老の刑事らしき男が、私の前に膝をついた。彼は冷静で、しかし威圧感のある眼差しで私を見下ろした。
「失礼。あなたは、この家の旦那さんで間違いないな?」
「……はい」
声が掠れる。
刑事は浴槽を一瞥し、そして再び私に鋭い視線を向けた。彼の瞳は、私をまるで犯罪者のように値踏みしている。
「状況は確認した。セメント袋、硬化した浴槽……手際が良すぎる」
刑事は周囲を指さし、浴室の壁に飛び散ったわずかなセメントの飛沫を指摘した。
「奥さんは、自らこの作業を行ったと?」
私が言葉を発する前に、刑事はさらに一歩踏み込んできた。
「奥さんの死を悲しむ前に、あなた、様子が変だ。それに、この種の自殺で、浴槽から出るのを防ぐため、**力ずくで固めようとしたケース**も存在する」
刑事は静かに、しかし断定するように言った。
「**お前がやったのか、?**」
その一言が、私の頭の中に響いた瞬間、世界が反転した。
悲しみと後悔で麻痺していた私の感情に、突然、巨大な怒りと恐怖が湧き上がってきた。
「**え?**」
私は、その場に固まったまま、意味を理解できずにただ聞き返すことしかできなかった。
最愛の妻が、こんな凄惨な方法で自らの命を絶った。その衝撃に打ちひしがれている私自身が、今、殺人犯として疑われている。
蝋燭の光が、血の気が引いた私の顔を、冷たく照らしていた。
(これは…妻の自殺なのか?それとも、作者めが仕組んだ、新たな試練なのか?)
私の運命は、永遠に続く理不尽な物語の中で、またしても最悪の展開を迎えたのだった。
「お前がやったのか?」 志乃原七海 @09093495732p
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