孤独な人間の隙間-間宮響子-

　霊能力者・間宮響子のもとに、深夜二時、正体不明の女から奇妙な電話がかかってくる。「もう私は私ではない」――そう告げた声は、背後に“もう一つの呼吸”を伴っていた。翌日、響子が訪れた集合住宅で出会った女は、自分の中に別の存在が入り込み、少しずつ人格や身体の癖が置き換えられていく恐怖を語る。

　それは霊でも悪魔でもなく、「人間になりたがる何か」。孤独と隙を見つけ、電話や鏡を通して人を模倣し、静かに“入れ替わる”存在だった。響子は進行を止めようとするが、すでに女は表層まで侵食されており、完全な救済は叶わない。

　数日後、女は不可解な死を遂げる。しかし事件は終わらなかった。その夜、響子のスマートフォンに映し出されたのは、わずかに動きの遅れた“もう一人の自分”。

　恐怖は依頼人だけのものではなく…続きを読む