あらかじめ知ってしまう恐怖

前編で描かれる家庭内の緊張感――精神を病む母、崩壊した家族関係、淡々と事後処理をこなす主人公の冷静さ――は、派手な事件が起こらずとも読者の心を強く掴みます。
一方で、後編では、唐突かつ圧倒的なスケールで宇宙人襲来という極端な非現実が描かれます。

一見すると荒唐無稽ですが、前編で積み上げられた「予知」「夢」という、あらかじめ知ってしまう恐怖があるからこそ、必然的な惨劇として受け入れざるを得ません。

読後、「これは夢だったのか」「これから起こるのか」という問いから逃れられなくなります。

短いながらも強烈なホラーSF作品です。

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