隔絶された世界を繋ぐ窓

月面開発の技術者として月で起居する夫は地上の妻子とクリスマスの挨拶を交わし、帰還予定を話し、妻はどこが変わったところがあるか彼に尋ね、他愛のない話をする。

だが、そのやりとりは直後に月面の大規模事故で亡くなった夫の事故前最後の通信の残滓だった。

スペースデブリで隔絶された月と地球、時を止めて揺蕩う記録と生きて老い進んでいく人生。

一年に一度だけ開く通信によって、彼はシュレーディンガーの猫のように生かされていて、ニューシネマパラダイスの映画館が広い世界と閉塞した村を繋ぐ唯一の窓であったかのように、年に一度の通信と夫婦の愛が本来隔絶されてしまう彼らをか細く繋いでいるかのように感じました。
ですが、これは私が感じたことであって他の方はまた違う感じ方をされるのではないかとも思います。
短編でありながら、あまりにも深く重い物を含んで考えさせられるSFです。
ぜひお読みいただいて、あなたの感想を掴んでいただきたいです。

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