私がイケオジを書くこと
紅夜チャンプル
私がイケオジを書くこと
私の作品には、いわゆる「イケオジ」がよく出てくる。最初は無意識だったが、気づけば書いている男性は大体が四十代以降、優しくて包容力のある渋めの人物ばかりになっていた。
なぜイケオジを書いているのか。憧れもあるけれど、昔から気になる相手はおじさまが多かったからだろう。
学生時代は周りが恋バナで盛り上がる中、私はおじさま先生に憧れていた。休み時間には、特に用もないのに職員室を覗きに行ったものだ。
いきなり私が先生を呼んでも「お、どうした?」と微笑んでくれる。授業中は怖いのに、ふっと緩む表情。今思えば、私が惹かれていたのは恋愛感情ではなく、この「余裕」だったのかもしれない。
同級生たちと違って、自分の話を最後まで聞いてくれて、不安なときに「大丈夫だ」と言ってくれる。決して否定せずに励ましてくれるおじさま先生――その魅力は若さや勢いではなく、経験が生んだ「余裕」なのだ。
そんな私は社会人になった時も、同僚よりもおじさま上司と過ごす時間が多かった。流行がわからないので、同年代とは話が合わず、自然とおじさま上司と一緒にいた。
その上司は、私以上に私のことを理解してくれているようで、一番欲しかった言葉をかけてくれた。そっと背中を押してもらえて、モチベーションも上がってくる。いつしか、その上司のために仕事をするようになった。
けれどある日、周りが昇進していく中で「このままではいけない」と思った。ちょうど別のプロジェクトに移ったのを機に、その上司とは離れた。最初は寂しかったが、仕事に行き詰まるたびに、あの人の言葉を思い出してどうにか前に進むことができた。
私はそのとき初めて気づいた。
余裕のある人は、誰かを縛らない。
ただ、自分の足で立てるようにしてくれるのだと。
だから私は、物語のイケオジにも、主人公を「見守る」役割を与えている。
彼らは誰かの代わりに決断しないし、幸せの責任も引き受けない。
ただ一歩引いた場所で、「大丈夫だ」と言うだけだ。
それで十分だと、私は知っている。
人は誰かに背中を押されても、歩くのはいつも自分自身だから。
私がイケオジを書くこと 紅夜チャンプル @koya_champuru
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