まるで、浅田次郎の『壬生義士伝』を思わせる作品である。主人公は、近藤勇や土方歳三、岡田総司ではない。もっと通なところを攻めてくるのである。本作は、新しいなんだろう、なんと言えばいいだろうか、生まれた時の情念というか、それがひいては輪廻や円環といったところにも通ずる、心的ホラーの出現と表現できようか!読んでみて、ご自身で是非、味わってみていただきたい。
新選組のとある幹部のお話です。かつて彼と恋仲に会った女性との思いの結実がこの話の大きな核になります。彼は新選組の中で良識派として二つの勢力のハザマで迷い、そして泥をかぶっていきます。そんな彼に組織は非情な沙汰を下します。あるいみ理不尽で、暴虐で、身勝手な。彼を慕う剣士が彼の死を悼み、そして物語はそこから大きく不思議な展開になります。新選組好きにはたまらない物語であると同時に、この作者のファンにはすてきな人物が関わってきます。ぜひご一読あれ
童歌、風車、似た顔、再び宿る命――次に何が起きるのか。この作品は、静かで、間違いなく怖い。歴史小説として始まり、気づけば物語は怪異譚へと反転している。そして、読み終えたあとも、終わらないものがある。それは、あなたの頭の中で、赤い風車が回り続けているはずです!!
時は幕末から明治初期。新撰組副長・山南敬助とその息子・要助にまつわる物語。二人称が持ち味の地に足がつかない語り口、否――魂の声が時のまなざしとなってまとう独特な作風に引き込まれる。父親に殺された息子の魂――彷徨い抜いて宿る先は誰の身体なのか。身体の中から聞こえてくる誰かの声も。ささやく地蔵に宿る似せる顔も。哀しみと業の思念とが静かな輪廻となって、再び巡りゆく。地蔵菩薩の赤い風車のように。いつまでも回る余韻が美しい時代ホラー小説。