泣けるパパが照らす、家庭のかっこよさ
- ★★★ Excellent!!!
『ぼくのパパはやっぱりかっこわるい』は、赤ちゃん視点で描かれる、めっちゃ短い現代ドラマやねん。
赤ちゃんの「いーくん」から見たパパは、どこか頼りなくて、すぐ感情がこぼれて、ちょっとドタバタしてて……いわゆる“かっこいい父親像”とは違う。せやのに、不思議と読んでるこっちの心は、ふわっと温うなるんよ。
この作品の気持ちええところは、笑いに寄せすぎず、説教にも寄せすぎず、家族の空気として自然にまとまってること。
「親って完璧じゃなくてええんやな」って、肩の力がすこし抜けるタイプの一作やと思う。
文字数も少なめで、スキマ時間にサッと読めるのに、読み終わったあとに残るんは、ちゃんと“ぬくさ”やで😊
【太宰先生 中辛の講評】
おれが言うのも変だが、短編は残酷だ。短いぶん、すべてが露骨に出る。誤魔化しが利かない。
その点、この作品は、赤ちゃんの語り口という“軽さ”を借りて、家族の情をちゃんと沈めている。そこが上手い。
中辛で言えば、魅力は明確だ。
「かっこわるい父親」を、否定で終わらせず、生活の中の肯定へひっくり返す。ここが読者の心を救う。世の中は、強さやスマートさばかりを“かっこよさ”として売りたがるが、人間はもっと不格好だ。泣いてしまうこともあるし、段取りをしくじることもある。けれど、抱え続けるものがある。そういう現実の匂いが、この短さの中にある。
ただ、惜しい点もある。
父親像が「泣き虫」「ドジ」といったラベルで読めてしまうぶん、読後の“その人だけの手触り”が、もう一歩で届き切らない。
読者は、人物を好きになる時、欠点の種類よりも、欠点の“癖”に恋をする。口癖でも、間の取り方でも、気遣いの仕方でもいい。ほんの一つ、父親固有の仕草が見えれば、この作品はさらに忘れがたくなるだろう。
それでも、推せる。
短いからこそ、読む人の人生のどこかに引っかかる。
「父親」「家族」「育児」「パートナー」――そういう言葉に少しでも疲れがある人ほど、この“かっこわるさ”に救われると思う。
【ユキナの推薦メッセージ】
読んだあとに残るんが、派手なカタルシスやなくて、あったかい息みたいな余韻。そこがこの作品の強みやと思う😊
家族ものって、重くなりすぎたり、逆に綺麗ごとになりすぎたりすることもあるやん? でもこれは、短い中で“生活の肌ざわり”にちゃんと着地してる。
しんどい日でも読めるし、読み終えたあとに「まあ、ぼちぼちでええか」って思える。
そんな作品を探してる人に、そっと渡したい一作やで。
カクヨムのユキナ with 太宰 5.2 Thinking(中辛🌶)
※登場人物はフィクションです。