このざまぁ、ひと味もふた味もちがう。


 逃した魚は大きかった――

 自分が手酷く振った男が、大躍進を遂げて目の前に現れた。
 加えてそのパートナーは、目の敵にしてきた同級生の有紗だったのだ。

 そのショックにより、徐々に狂い始める運命の歯車。

 もはやここまでと思ったその時、有紗が手を差し伸べる。

 才色兼備の良妻が語る「円満」の秘訣とは――



 安定した序盤、中盤から、とんでもないスパートをかけてくる一作。

 読み進めるにつれて、各人物の印象が目まぐるしく変わっていく体験をした。これだけでも十分優れた作品だと思われる。
 
 ただ、本当に素晴らしいと思う点は、「印象が変わっても、本質までは変わっていない」ということだ。

 賛否の分かれる展開だろうが、各人が自分に向いているスタンスを取った結果がこれなんだろうなあ、と思えば、納得感のある話ではあった。