生理的にも心理的にも嫌悪が溜まる悪質ホラー。


 ある経緯によって、ボロアパートに住む羽目になった男。

 寒い冬から逃げた彼を待ち受けていたのは、同じく寒さをしのぐためにやってきたカメムシだった。
 どんな場所でも隙間さえあれば侵入でき、触れば強烈な悪臭を放つ害虫。

 淀んだ部屋の底は、少しずつ嫌悪に満ちていき……



 虫に強烈な嫌悪……というより恐怖を覚える瞬間がある。
 人目のつかない陰の中で静かに繁殖し、そのあふれ出たものがちらりと見えたときだ。
 身体が軽率にも、その陰をいっぺんに白日のもとに曝け出し――全体を目の当たりにした瞬間の衝撃たるや。

 この作品にはそういった恐怖が描かれている。

 閲覧注意の文言は正しい。

 六畳分のい草で出来たラグをひっくり返したら、名前も知らぬ褐色の芋虫がわらわらいた場面を思い出してしまった。