ep47:陽太視点⑭

 馬車を使わず登校した俺は、他の生徒たちが来る前に学校に着いた。


『あーあ、護衛をあんなに引き離しちゃって。みんな必死で走ってるよ』

『彼らの鍛錬にもなるから、ちょうどいいさ』


 苦笑しながら念話を送ってくるエアに、俺も念話で答える。

 近くに人はいないが、音声会話はしない。

 精霊の声は勇者にしか聞こえないから、俺の独り言みたいになっちゃうからね。


 ソレイユ騎士団養成学校。

 敷地内に入った俺は、大木の後ろに隠れて上着を脱いだ。

 エアが心地よい風を吹かせて、火照った身体を冷やしてくれる。

 俺は学生鞄からポーションの小瓶を取り出すと、一気に飲み干した。

 甘酸っぱい果実水のような味がする。

 スポーツドリンクよりも美味しく、身体に染み渡る感じがした。

 全力疾走の疲労が、一気に癒えていく。


 続いて、汗で濡れた衣服に魔法を使った。

 汗臭いまま入学式に出るわけにはいかないから、綺麗にしておこう。


 生活魔法:洗浄(ラヴェ)、乾燥(セシェ)


 布地から汗が分離され、洗濯して乾燥機にかけたように綺麗になる。

 サッパリした俺が涼しい顔で校庭を歩いていると、護衛騎士のルヴェとレゼルが駆け込んできた。


「……で……殿下……」

「ご、御無事……ですか?」

「うん、何も危険は無かったぞ」


 どちらも汗だくで真っ赤な顔をして、俺を見つけると駆け寄ってきてゼエゼエ息切れしながら問う。

 何も文句を言わないのは、主従関係もあるが、慣れもあるかもしれない。


『彼らも涼ませてやってくれ』

『はーい』


 俺は念話でエアに頼んだ。

 ゆでダコみたいに真っ赤な顔で汗をダラダラ流している騎士たちに、エアが涼風を送る。

 心地よい風を感じて、2人はフゥッと息を吐く。

 俺は学生鞄からポーションの小瓶を2つ取り出すと、ルヴェとレゼルに手渡した。


「飲め。お前たちの分だ」

「「は、はい」」


 騎士たちは素直に受け取り、一気に飲み干す。

 王族といっても、俺は普段から彼等と一緒に稽古をしているので、割と気安い関係になっている。


「割と速かったな。そのうち並んで走れるかもしれないぞ」

「そうなりたいですね」

「せめて殿下の姿が見える距離を保てるように頑張ります」


 話している間に、騎士たちはそれぞれ生活魔法を使い、汗で濡れた衣服をスッキリさせた。

 彼らも息が整い、ポーションで体力も回復したのでヨレヨレな感じは無くなった。

 ここまで全力疾走してきたとは思えない、キリッと引き締まった騎士コンビだ。


 その頃になると、校門からゾロゾロと生徒たちが入ってくる。

 男子校というわけではないけれど、貴族の令息が多く、ほとんどの生徒が侍従を従えていた。


「そろそろ入学式が始まるな。行くか」

「「はい」」


 俺も騎士たちを後ろに従えて、入学式が行われる武道館に向かった。

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