軍隊×国境守備という硬派な空気の中に、「獣人部下たちの身体性」と「種族としての感覚差」がこれでもかと詰め込まれています。
虎次郎軍曹、二メートル超の体躯という迫力はもちろん、背筋を伸ばし続けるのが苦手という生理的な癖、冬毛の手触りを確かめる仕草など、「虎人という生き物」を落とし込んでいてリアルです。
獣人を“かわいいだけの添え物”にせず、身体能力・文化・軍制とのかみ合わせまで含めて「戦力としての獣人」を描こうとする姿勢が徹底されています。
硬派なミリタリーの緊張感と、リアリティが同居した、獣人好きにはたまらない作品です。
根本的な構造として、主人公は少し理想的な文明人としてふるまい、彼が全く違う文化圏に属する獣人や、あるいは俗人的な軍の人間と接するというものがある。
いうなれば交流をしている様子をみて楽しむという娯楽で、そこのところを重視しているという序盤の売り込み方と、実際の体験(主人公視点で得られる他者に対する気づき)や、人物像のバリエーションは、なるほど書籍化するだけあって充実している。
個人的には獣人云々よりも、俗人的な部下上司と接する主人公が面白かった。
というか、獣人はエゴや葛藤がないので、パーソナリティがあまり確立されていないように感じる。トラウマなど積み重なった刺激を感じないというか……
読者的に問題点となるだろう部分は「展開の断続性」「描写の少なさ」「複数人の視点を利用しているメリットの少なさ」といった具合。
特に導入やクッション的描写が少ない。主人公が属する組織や集団がどのようなものなのかという部分が、理性的にも感覚的にもわかりづらい。
具体的な例を挙げると、所属している軍と国はどのような風土に基づいていて、どのような衣食住の文化を持ち、どのような国家間関係を持つのか?そもそも宗教や風習などといった文明圏としての人種的文化は?
そういった箇条書きできる要素が出されていない。
では箇条書きできないような、森や風に宿る季節感だとか、兵営に明かりはどのくらいあるだとか、そういう空気感を想像させ、没入させる要素は?
まああんまりない。
一人称視点を利用しているが、そういった読者への補助があまりないので、総合的にみて「コミュニケーションなどで人がわちゃわちゃしてるのを見る」という、いうなればセリフメインのノベルゲーとして娯楽性が成り立っているように思う。
そういった部分でみると、ちゃんと段階的な物語の構造を用意してあって、丁寧だから読んでいて楽しい。
多分描写などといったディティールよりも、今ある強みのキャラクターの交流を濃厚にしていったほうがいいんじゃないかな~と思う程度には、面白く読めたので、今後も読むと思う。
応援の意でレビュー。