郷愁が胸を打つノスタルジア・ロマン。


 迷信深い祖母は、昔の私によく謎めいた話をこぼしていた。
 いつも同じ話だからと、当時の私は煙たがっていたが、今となってはなぜだか印象深い。

 私が祖母と同じくらいになった時、自分以外は誰もいなくなった。
 
 だからなのか、よく見るのだ。

 昔の家に戻る夢を――



 読んでいて懐かしい気持ちになる作品。

 祖母と孫の距離感、今はなき古い実家、迷信の内容、あたたかな雰囲気――

 思い出による補正も加味されているだろうが、家族と話す時のくすぐったい感覚が、上手く再現されている。

 得ていたのに得ていない、気付いたときには取り戻せない。
 そういう不思議なやるせなさが、郷愁となって胸を打つ。