概要
午後の光と焼きたての匂いが満ちる、小さなパン屋。
栗栖澄音が店番をするその場所には、今日も少し変わった依頼が舞い込む。
死ぬ前に後始末を頼みたいと告げる青年・恒一。
気づかれずに娘を守ってほしい母親。
消えた犬を探してほしい元忍びの警官・透。
父を安心させたいと願う車椅子の青年・悠真。
仮面がなければ歌えないボーカル。
亡き妻の指輪を命日の一夜だけ取り戻したい老人。
会社で傷つき、自分を責めかけている女性。
やさしさの境界を見失った恋。
忍びの技とパンの温度で、澄音はひとつひとつの依頼に向き合っていく。
そのなかで、死にたがっていた恒一は少しず
あなたが毎日笑顔でいられますように。心を込めて、今日も創作を楽しもう!
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!ただのパン屋じゃない。ただの忍びじゃない。「自分」は自分で選ぶ。
題名は「ただのパン屋じゃない」。
キャッチコピーには「時代遅れの忍び」。
しかし、忍びとしては時代を超えて本質的な難点があると読者は気づいていきます。
誰かに仕えることを是とする忍びが、主人を自ら選ぶことは許されるでしょうか?
仕えるのではなく依頼を受ける忍び。忍びに仕事を持ち込む依頼人。いずれも、自分が何をするべきか迷いを抱えています。
忍びに仕事を持ち込むとは、依頼人は自身の問題の解決を専門家に委ねる決断をしたはず。それなのに。
自分のことは自分で決めるしかなくなっていきます。そもそも自分とは何でしょう? 私達が想像しているのは実態から乖離した括弧付きの「自分」ではないでしょう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本当に、ただのパン屋ではありませんでした
この物語に出てくるパン屋は、タイトル通りただのパン屋ではありません。
なんと、忍びが経営しています。
忍びとパン屋。
この小説に出会わなければ、私の中で一生結びつくことのない要素同士でした。
もう、それだけで、心を鷲掴みにされてしまいました(笑)
この風変わりなパン屋には、様々な依頼がきます。
内容は、本当に様々。
そして、
そのどれもが、心に刺さる…
本当に、色々な意味で、心に刺さる、
そんな依頼の数々を、このパン屋の面々は、解決していきます。
シンプルに、お話がとても面白い!
でもそれだけでなく、
現代を生きる忍びを通して、
この世界に存在する
つらいことや悲しいことに見舞われている…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文が花開く瞬間に立ち会える物語
『音に、音はない』から『ただのパン屋じゃない』へと拝読してきて、作者様の文体にひとつの変化と成熟を感じました。時間をかけて文章が少しずつ花開いていく、その過程を見せていただいているような気持ちになります。
パンの描写も実に印象的で、香りや味わい、光景までもが目の前に立ち上がってくるようでした。また、「パン」と「忍び」という一見すると遠く見える要素が、ひとつの物語の中で自然に結びついていることにも驚かされました。
作中には、まるでドラマのワンシーンのようで、強く印象に残った場面がいくつもありましたが、とりわけ車椅子を押して砂浜に跡を残していくくだりには心を動かされました。作者様が日々の暮らしや…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人に寄り添う現代の忍びと焼き立てのパン
青年が自殺の後始末を依頼したのは現代の忍びが営むパン屋。
忍びとは我を持たず、ただ求められる役割を果たす者。
でも、このパン屋は違います。
人の心に寄り添い、本当の解決法を探していく。
青年はそんな忍びと共に人々の依頼をこなすようになり、そして自らの心とも向き合っていく。
「人はパンのみにて生くるに非ず」
有名なこの言葉は、人はパン(物質的な豊かさ)のみでは無く精神的な豊かさによって豊かな生を生きることができると謳うもの。
ですが、この物語のパン屋が焼くパンは決してただ食べられるというだけのものでは無い。
そこには人に寄り添う現代の忍びが込める思いが込められています。
現代の忍びが織りな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!“生きる選択”を描いた作品
この物語はタイトルが示す通り、ただのパン屋の話ではなく、「忍者の物語」でありながら、本質は“生きる選択”を描いた作品だと感じました。
死を選びかけた恒一さん。
見えない世界を歩き続ける春さん。
甘い匂いを纏ったまま立ち止まっていた澄音さん。
それぞれが少しずつ「立つ側」を選び直していく過程が、とても丁寧に描かれています。
パン屋というやわらかな世界と、忍びという厳しい世界が対立せず、自然に溶け合っていく構造も印象的でした。
とりわけ、命の重みを静かに軸へ据えている点が、この物語の芯を強くしています。
派手ではないけれど、確かな熱がある。
静かなのに、揺るがない強さがある。
そんな連…続きを読む