壊れた兄の背中を、もう一度追う

兄のようになりたい──そう願っていた。
家の庭で毎日、ただ二人でキャッチボールを続けた。
夢は同じ、目指す場所も同じはずだった。

ある日を境に、兄は笑わなくなった。
何も言わず、部屋から出てこなくなった。
「天才」と呼ばれた兄の姿は、表舞台から消えた。

それでも僕は野球を続けた。
怒りを抱えながら、叫びを飲み込んで。
壊れてしまった兄の影を、どうしても忘れられなかった。

「死んでくれ」
そう言った自分を、いまでも許せない。

すれ違い、傷つけ合い、それでも――
兄と過ごした、あの日の「ハンバーガーの香り」が胸から消えなかった。