“好き”に全力だったネット黎明期の記憶

 このエッセイ、なんというか、読んでいると“あの頃”の空気がまざまざとよみがえってきて、気づけば自分までタイムスリップしている気分になりました。ピーガガガ…の接続音、深夜にこっそり検索したあのドキドキ、HDD容量とのにらめっこや、謎のファイルに一喜一憂したあの頃。

 技術と「好き」という気持ちの両方に翻弄されながら、自分だけの聖域を作っていく主人公の姿が、ちょっと不器用で、でもめちゃくちゃ愛おしいんです。パソコン自作やP2P、聖地巡礼に初音ミク。大人になって忘れていた“何かに夢中になる楽しさ”や“ネットのもう一つの青春”を、懐かしい言葉たちで思い出させてくれます。

 “みんなの「青春の座標」はどこにあった?“ … … そんな気持ちでページをめくってほしい、あたたかなネットの回顧録です。

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