男の娘のこのこ、虎視眈々

 ラブ【コメディ】である。
 まず冒頭から寝起きの状態から始まり、「突飛な文章」から始まる。つまり物語が始まる瞬間から半覚醒状態でスタートするのだ。
 そして目が覚めたかと思えば幼馴染の男の娘が、そして双子の妹が登場し、登校すればシカが出て来る。
 シュルレアリスムである。これはラノベの形をした一種の芸術なのである。

 ではこれらの表現が主人公たちの心情を隠喩しているのだろうか。
 恐らくだが、全くもってそんなことはない。
 ゆえにシュールなのである。だからこそシュールなのである。

 しかし読み進めていけば彼らの生い立ちや関係性などが浮き彫りになり、物語の奥行が見え始める。
 これは驚いた。こんなにも荒唐無稽な描写をしながら、学園ものとしての平穏な日常もしっかりと描き切っているのだ。
 この均衡のとれた【ラブ】と【コメディ】の組み合わせはいったい何なのだろうか。底知れないポテンシャルを秘めた、新感覚の小説体験であった。

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