◆藍色の同居人◆

茶房の幽霊店主

第1話  藍色。

※(匿名様から直接聞いた体験談です)

※(プライバシー保護のため地域・固有名詞などは伏せています)


数年前、就職活動をしていたのですが、派遣会社へ登録するなどして仕事への意欲はあるものの、なかなか上手く行かず、色々とストレスが溜まっていた時期の体験です 。


私は当時お付き合いをしていたひとと同居していましたが 、心配をかけたくなくて仕事の話はしてしませんでした。

同居人も分かっていたのか聞いてくる事はなかったです。


短期の仕事をこなしながら不安な日々を過ごしていたので 、メンタルは少し不安定だと自覚もありました。


仕事を終え、日常的な他愛もない会話をして就寝 。

横になってから数時間が経過していたと思います。

肩をゆっくり揺さぶられているのだと気が付きました。


『どうかしたのか?』


聞きましたが返事はありません 。


その後も断続的に肩を軽く揺さぶられ続け、眠かったのですが目を無理やり開けてみると 、髪が床に這うほど長く、全身が真っ青な 藍色の同居人が、膝をつき肩へ手をかけていました 。


『…き………』(おきて。と言っていたような気がします)


藍色の姿のものは自分を起こそうとしているようでした 。


見た目は異様なのですが、とても優し気で 、なぜかまったく恐怖を感じなかったのです。

直感で、これは同居人の姿をしてるが 別のものだと思いました 。


気が付けば朝になっていて。夢をみていたようです 。


それでもやけに生々しく、確認のため 昨晩、起こしに来たかを聞きました。


答えは、爆睡していたので起きてない 。


住んでいるアパートは〇〇遺跡が近く 、稀にですが地元民も奇妙な体験をしている 。


自分は怪異と出会ったのではないか 。


その夜以降、二度と出てくることはなかったです 。

今の職に就いて九年目です 。当時の同居人とは結婚して籍を入れました。

何となく藍色の怪異との出会いを境に 幸運が舞い込んだ気がします。


※※※※※


※(ここからは【藍色の同居人】の考察です)


目視できる形で現れたものが、鮮やかな『原色』に 近い色であった場合、多くはストレスによる 脳の処理落ち・エラー、幻覚である可能性が高いです 。


しかし、聞いたお話で匿名様は『ジーパンのような色』 と言っていたので暗い青『藍色』で表現させていただきました。


また、見えざるものが顕現する時 、『知っている者の姿を借りる』のは割と知られています。


『怪異』らしきものが現れてから幸運が舞い込んだ。

それらは就職活動中の不安が見せた幻影だったのか 、『怪異を肯定する』事で福へ転じたのか……。


狭間を覗くかのような不思議な体験談でした。

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◆藍色の同居人◆ 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom

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