Dystopiaの凱旋。吹き荒ぶ海風と曇天の中で。
- ★★★ Excellent!!!
既に廃棄され人の記憶からも地図上からも忘れ去られた海上都市。
全くの無人の筈の、その都市から何故か
人口増加と人々の行動ログが上がり続けて
いる。
センサー異常、システムの誤作動…
様々な要因が考えられるが、その報告の
生々しさに 或る種の予感 めいたものを
感じずにはいられない。
若手の研究員 安斎結人 は、その
原因を探るべく
『中央観測モジュール=アーカイブ』へと
派遣されるのだが…。
無人となった嘗ての海上都市の、暗い
無機質な闇の中から、彼をじっと見つめる
ナニカ が。少しずつその容貌を
表してゆく。
この恐ろしい程の緊張感と、更にその
異常数値の 原因 が解明されて尚、
少しも薄れない不安。
彼は一体、ナニを見たのか。
誰も居ない筈の、遺棄された海上都市都市
鉛色の曇天、昏い海の色。
海風が吹き荒ぶ中、コンクリートの
足下から音を立てて瓦解する 概念 と
神からの啓示の如き 人の叡智 を
Katharsis(崩壊)とSublimation(昇華)に
乗せて描き切る。
この作品の凄さは、語れない。
ともあれ、自ら読んでみない事には。