Dystopiaの凱旋。吹き荒ぶ海風と曇天の中で。

既に廃棄され人の記憶からも地図上からも忘れ去られた海上都市。
 全くの無人の筈の、その都市から何故か

人口増加と人々の行動ログが上がり続けて
いる。
   センサー異常、システムの誤作動…

様々な要因が考えられるが、その報告の
生々しさに 或る種の予感 めいたものを
感じずにはいられない。
 若手の研究員 安斎結人 は、その
原因を探るべく
『中央観測モジュール=アーカイブ』へと
派遣されるのだが…。

無人となった嘗ての海上都市の、暗い
無機質な闇の中から、彼をじっと見つめる
 ナニカ が。少しずつその容貌を
表してゆく。

 この恐ろしい程の緊張感と、更にその
異常数値の 原因 が解明されて尚、
少しも薄れない不安。

 彼は一体、ナニを見たのか。

誰も居ない筈の、遺棄された海上都市都市
鉛色の曇天、昏い海の色。
 海風が吹き荒ぶ中、コンクリートの
足下から音を立てて瓦解する 概念 と
神からの啓示の如き 人の叡智 を
Katharsis(崩壊)とSublimation(昇華)に
乗せて描き切る。


この作品の凄さは、語れない。
 ともあれ、自ら読んでみない事には。