廃棄された海上都市の中央AI「アーカイブ」は、誰もいないはずの都市で住民データを更新し続けていた。
調査に訪れた安斎結人は、自分の行動や思考までも正確に予測されていることに気づく。
さらに都市内には、彼と同一の名前と人格を持つ存在が現れ……
設定の段階から引きが強く、読み進めるほどに不条理な歪みが明らかになっていく構成が見事でした。
特に、行動予測が少しずつ「誘導」に変わっていく描写には強い恐怖を感じました。
「人間とは何か」「自由意思は本当に存在するのか」といったSF的テーマが丁寧に描かれていると思います。
安心だけでなく、不安も残す終わり方が、じわじわとした余韻を残します。
既に廃棄され人の記憶からも地図上からも忘れ去られた海上都市。
全くの無人の筈の、その都市から何故か
人口増加と人々の行動ログが上がり続けて
いる。
センサー異常、システムの誤作動…
様々な要因が考えられるが、その報告の
生々しさに 或る種の予感 めいたものを
感じずにはいられない。
若手の研究員 安斎結人 は、その
原因を探るべく
『中央観測モジュール=アーカイブ』へと
派遣されるのだが…。
無人となった嘗ての海上都市の、暗い
無機質な闇の中から、彼をじっと見つめる
ナニカ が。少しずつその容貌を
表してゆく。
この恐ろしい程の緊張感と、更にその
異常数値の 原因 が解明されて尚、
少しも薄れない不安。
彼は一体、ナニを見たのか。
誰も居ない筈の、遺棄された海上都市。
鉛色の曇天、昏い海の色。
海風が吹き荒ぶ中、コンクリートの
足下から音を立てて瓦解する 概念 と
神からの啓示の如き 人の叡智 を
Katharsis(崩壊)とSublimation(昇華)に
乗せて描き切る。
この作品の凄さは、語れない。
ともあれ、自ら読んでみない事には。