老皇帝と元帥。二人の「軽口」の裏に隠された絆に、胸が熱くなりました。

「脚色」を巡るユーモラスなやり取りが、後半に語られるアレリウスの本音――「忘れ去られることへの恐怖」と重なった瞬間、一気に物語の切なさがこみ上げてきました。 誰もいない場所でだけ「アレス」と呼び、オレンジの皮を剥いてくれるカールの不器用な優しさが、死を待つ部屋を温かく照らしているようです。 偉大な皇帝が最後に遺そうとする「嘘」は、自らのためか、あるいは帝国の誇りのためか。沈みゆく太陽のような美しい文章に、一瞬で魅了されました。

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