概要
不安も喜びも借りられる世界で、本当の心だけが少しずつ静かに削れていく。
街では、スマホアプリで感情を貸し借りすることが日常となっていた。
不安な朝には『安心』を、疲れた夜には『喜び』を。
ほんの少しの課金で、誰もが心を取り替えることができる。
僕もまた、恋人や友人、母のために感情を送りながら、逆に他者の感情に侵食されていく一人の利用者にすぎなかった。
しかし便利な日常の裏で、貸し借りされた感情は静かに濁りはじめ、やがて逆流と暴走が街を支配していく。
貸した感情も、借りた喜びも届かず、胸の奥に残るのは空虚だけ。
僕はスマホを置き、自分自身の空洞に耳を澄ませる。
――この感情だけは、誰のものでもないと信じるために。
不安な朝には『安心』を、疲れた夜には『喜び』を。
ほんの少しの課金で、誰もが心を取り替えることができる。
僕もまた、恋人や友人、母のために感情を送りながら、逆に他者の感情に侵食されていく一人の利用者にすぎなかった。
しかし便利な日常の裏で、貸し借りされた感情は静かに濁りはじめ、やがて逆流と暴走が街を支配していく。
貸した感情も、借りた喜びも届かず、胸の奥に残るのは空虚だけ。
僕はスマホを置き、自分自身の空洞に耳を澄ませる。
――この感情だけは、誰のものでもないと信じるために。