第7話 親方家を建てる2

ノミ公は製材が終わると、最初に伐採した木を指さして促した。


「次はこの倒木を製材すりゃいいんだな。……おっこらしょっと」


大吉は手斧を持ったまま屈み込み、作業を再開しようとした。

だが、その瞬間――


『即完機能を使用しますか? YES or NO 数1 消費OP4』


頭上に、今度は即完機能のステータス画面が”ぽん”と浮かび上がった。


「うおっ、また出たぞ!」


「やっぱ思った通りだ!」

ノミ公は腕を組んでふんぞり返る。

「即完機能ってのは 一度やった作業じゃないと使えねぇ んだ。

逆に言うと――

一度でもやれば、その瞬間から次以降で即完が解放されていく!

つまり仕事がどんどん楽になるって寸法よ!」


「なるほど、そういう事か!」

大吉は手斧を肩に担ぎ、思い返すように頷いた。

「言われてみりゃ確かに、木を伐った時も最初は即完なんて出なかったな。

……おめぇ、冴えてやがるじゃねぇか」


「へへん。言われるほどの事は――もちろんあるぜ!」


「「ハハハハハハッ!」」


二人は豪快に笑い合った。


その後は、家や敷地、さらに将来の菜園を見越した範囲を中心に、次々と木を伐っていく方針となった。

伐採でOPがどれだけ稼げるのか、即完を製材に回すべきか――そのあたりのバランスも見極めながらだ。


本来、木を伐りまくると倒木の置き場に困るものだが、そこは大吉の 倉庫スキル が大いに役立った。


ある程度伐って地面が倒木で埋まり始めたところで、大吉は倒木を倉庫に放り込むことにする。


『収蔵物──倒木 数1 ▼ 消費OP1』


「すげぇぞ親方!」

ノミ公がステータス画面を指差す。

「今までに伐った倒木は10本あるけどよ……まとめて入れても、1本だけでも、消費は同じ1OP みたいだぜ!」


「なぬ、そんな安いのか!」

大吉は思わず目を丸くした。

もはや大吉にとってはOPはお金そのもののようで、高い、安いで考慮し始めていた。


「そうだぜ! 今回はスペースの都合で10本だけだが、次はもっと一気に入れても同じ1OPだ。入れるのは安いが、出す方はけっこう高い……まあ、そういう仕様なんだろ」


「なるほどな。じゃあワシは引き続き伐りまくるから、てめぇは頃合いを見てまるっと収蔵してくれ!」


「がってん承知!」



大吉はチェーンソーを唸らせ、勢いそのままに木々を倒していく。

当然ながら静かな森には轟音が響き渡り――その音に吸い込まれるようにして魔物たちが近づいてくる。


「おっと、また来やがったな!ワシのゲンコツを食らえ!」


襲いかかる魔物を、そのつど大吉は返り討ちにした。

気付けばそこら中に魔物の骸が転がっていた。



やがて大吉はチェーンソーのスイッチを切り、ふぅと息をつく。


「はぁ……ずいぶん伐ったなぁ。

そろそろ飯にしねぇか? 腹時計が鳴りまくってやがる」


「そういやそんな時間だな。

……だが、オイラに飯はいらねぇぜ」



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異世界親方が家を建てながら世界まで変えてるんだが…… 東春匂梅 @resta-man

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