百話目怪談

陰杞 憂

第1話 夢の話

さあさ、この展望台での百物語もいよいよ最後ですね。

みなさん最初はこんなところでやるなんてと思ったでしょうが…意外と、いい夜景を見ながら怪談を語ると言うのも意外性があっていいでしょう?なんというか…生き物の目みたいで。

えっ?暗い部屋でやる方がいいって?

…まぁ人それぞれということで、最後の話をしますね。


私が小学生の時のお話です。まぁあの頃の私はクソガキでね。

当時の私は噛み癖がありましてねぇ…。鉛筆やら、爪やら、自分の腕やら…いろんなものに噛みついて…いけない、いけない。

脱線してしまうところでした。

まぁ…小学生ぐらいの時ですね。

私が寝室に入って、目を瞑った後…たぶん夢なんでしょうかね。

私は祖父の車に乗っていました。祖父はどこかワクワクしている顔で私に

「俺の友達に合わせてやる。」

と言いました。

何分か車に揺られ、外に出るとそこは見知った場所でした。その場所のベンチには

祖父と同年代ぐらいの男が猫を抱えていました。

祖父はさも親しそうに彼に挨拶しました。

男はそれを静かに答えていました。

祖父はベンチに座り、男とさも親しげに話していました。

でも私の興味を引いたのは、祖父と男の話ではなく猫でした。

綺麗な毛並みの黒猫。目は黄色でランランとしていました。

猫は私の視線を感じると男の膝から降り、私の目の前にきました。

…かわいいな。

私はそう思い、撫でようとした時。

猫に引っ掻かれてしまいました。手のひらに出来た3本の赤い線。それを見ると私は…

というところで目が覚めました。


…なんだゆめか。私はそう思いました。

そしてベットから起きあがろうとした時、手に鈍い痛みが走りました。

…手のひらに3本の赤い線。引っかき傷があったのです。

え?自分で引っ掻いたんだろって?そんなことありえないですよ。

だって、私には噛み癖がありましたから…爪なんてボロボロで何かを引っ掻く

ことなんてできないんですよ。

おかしいな…と思っていたんですよね。

それで祖父に聞いたりしていたんですけど、祖父もなんのことかわからないみたいで…

あれは夢なのか?それとも現実なのか?気になった私は猫と男に会ったところに行ってみたら、何かわかるんじゃないかって思ったんです。

その場所に何気なく一人で行ってみたら…

入り口のところに『きて』って書いてあるんです。

黒いペンキで…描き殴られたように。

私…足がすくんじゃって…なんか嫌な感じがして…私、走って帰っちゃったんです。

それ以降、そこには近づかないようにしていたですが…

でも誰かと一緒なら、大丈夫なんじゃないかって。


この展望台の入り口の横、見てみてください。


『きて』って書いてあるでしょう?

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百話目怪談 陰杞 憂 @inkey_yu

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