無垢なアンドロイドが受け継ぐ、名づけの連鎖

まるで古い映画を見ているようでした。

主人公リリーは無垢なアンドロイド。
創造主である博士のそばで暮らすものの、その生活は博士の死とともに終わりを迎えます。

博士の死によって初めて外の世界を知るリリー。
そんな彼女の胸には博士が最期に託した「願い」を叶えようという決意があるのですが、その過程がとても美しく、読後に深い余韻を残します。

個人的な見どころはやっぱり終盤のクライマックスとラストでしょうか。
特にラストの一文は「これで博士の願いをリリーは叶えたんだな」と強く印象に残った一方で、優しい喪失感が際立っていると思います。

どうか無垢なアンドロイドが生まれ直すまでの旅路をご覧ください。

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