大正時代の吉原芸者の恋の物語。

大正時代の吉原。
天涯孤独の八重は、唄に三味線、踊りで身を立てる芸者である。
芸者は、けして〝身体〟を売らない。
花魁たちの仕事を奪ってしまうからである。
また、同業者と恋仲になることも歓迎されない。風紀を乱すからだ。

ある日、火事で家を失ってしまった八重。
借金まみれとなってしまう。
窮地を救ってくれたのは、龍来屋(たつきや)という茶屋の主人。

優しい心遣いに、ほだされかかる八重。
しかし、龍来屋の主人は、もろに同業者。
真面目な八重は、この恋は成就しない、と己に言い聞かせる……。

丁寧に吉原の風景や良俗が描かれて、読み応えのある歴史ファンタジーです。