評価と安定を追いかけ過ぎて自分の人生を見失ってしまった男と、悪い男に絆されては騙され続けてしまった女の、淡い恋心を描いた心地良い良作です。
主人公の二人はどちらも、色々と少しずつ上手く行かなかった結果、なんとなく失敗してしまい、その空虚さを埋めるべく小旅行に出たという感じで、過剰な不幸では無いけれど、笑って忘れるには少し辛い状況、その薄ぼんやりとした不安感や苦いものは、原因や種類は違っても、なんとなく読み手として理解出来るので共感が持てる次第です。
そしてそんな二人が、不思議な偶然の末に少しずつ距離を縮めるのですが、距離を縮めるのに一役買っているのが美味しそうな料理やスイーツであり、この美味しそうな料理描写があればこそ、二人の仲が縮まる展開にも説得力が生まれるのだなあと感じます。
旅行に出かけて、美味しいものを食べて、温泉で温まって、思わぬ出会いに心をときめかせるという、シンプルに心の和む良いお話でした。