あとがき

 下にあります。

























 ひどい目に遭う善人のはなしが、プロットだけでもたくさんある。そのひとつ。病んでるときにこういうのが生まれる。個人的には自信作のつもり。発狂や死がギミックぽくなったのは否めない。


 ところで、村上龍先生の小説に『限りなく透明に近いブルー』というのがある。


 タイトルに反して最初から最後までエログロ満載の小説なんだけど、その中で、主人公が電車内で知らない女の子に足をかけて転ばせるシーンがある。


 18禁の描写が延々と続く中だと、さほどショッキングなシーンじゃない。でも、ぼくにとっては作中トップクラスの邪悪な場面に思えた。


 どうしてかは知らない。心理描写を極限まで省かれてた主人公が、いきなり不気味な能動性を発揮したからかもしれない。


 それとも、無関係な人へ加害性を向けたからかもしれない。


 なにはともあれ、そういうのが根底にあって『牧野さんのたからもの』が生まれた気がする。



 そして、この作品を書くにあたって「あえて説明しない」ことを意識した。


 いろいろキャラ設定は考えたが掘り下げを控えたり。


 でも読み返してみると、空回りだったというか、端折りすぎ感が否めない。村上春樹のような奥ゆかしい余韻をモノにすることはできなかった。


 どのみち客観視できるほど時間が経ってないので、今はなんとも言えない。思いがけない佳作かもしれないし、筋がめちゃくちゃな駄作かもしれない。だから読者さんにちゃんとメッセージが伝わってなかったら申し訳ないです。精進いたします。


 以下、個人的にキモいと思ったモノローグ三選。


・男として、おちょくってやりたい。


・ぼくは誰にも罪を話さなかった。もう傷つきたくなかったし、このまま大人になるべきと思った。


・そりゃいるよねとぼくは思った。


 ガッツリ倒錯してるわけじゃないけれど、どこかズレてる。


 主人公が早めに白状していれば少なくとも、牧野さんが見えない悪意に怯え続けることは、なかったと思う。

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牧野さんのたからもの 杉浦ささみ @SugiuraSasami

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