「余白の声」第6話「文句料」

秋定弦司

高所作業車の上の民主主義

 なるほど。「(政治に)文句があるなら税金を払ってから言え」とおっしゃいますか。

 確かに表向きは立派なご意見に見えますな。

 三大義務のひとつを盾に取るあたり、なかなか結構なお手並みでございます。


 しかし、その裏に潜む「税金も払えぬ低所得者は黙っておれ!」という声が、まる聞こえで誠に傲慢の極みでございます。


 ええ、己の意見の無責任さに気づかぬ方に説教するなど、わたくしの頭痛の種が増えるだけでございます。


 権利と義務の関係で正論っぽく聞こえるのは理解いたします。


 しかし、その理屈を本気で信じるなら、「義務を果たせぬ者は何も言うな」となるのでしょうね。


 実に見苦しい限りでございます。


 さらに、そんなご高説を、他人がご用意くださった梯子や高所作業車の上から垂れ流すとは……恥ずかしくはございませんか。


 私であれば、まず梯子を蹴飛ばし、可能であれば高所作業車のアウトリガーも外して差し上げたいところでございます。


 もちろん車体破壊などいたしませんが、「高所作業車」だけに。

 ……失礼、少々スベりました。


 ちなみに、わたくし、高所恐怖症でございます。


 高所作業を命じられたら、日当がいくら増えようと、泣いて土下座してでもお断りいたします。……ええ、日当の増減など、傲慢なご高説には関係ございませんね。


 結局のところ、理屈だけ立派な方々のご高説とは、梯子の上で威張るだけの、単なる滑稽な見世物に過ぎません。見ていて恥ずかしく、笑うに笑えぬ。しかし確実に迷惑な存在でございます。


 さて、次に梯子を蹴飛ばすタイミングを考えましょうか。

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