少年の苦悩
ぽのか先輩
第1話
少年は苦悩した。暗い部屋で電気も付けずに、椅子に深く腰を下ろし、腕を組んだり、右手を顎に当てたりして、時々「ああ…」とため息を付いた。
少年はまだ高校生だが、沖縄戦を語り継ぐ活動をしている。小学生の頃に曽祖父の残した日記に書かれた沖縄戦の話を読んで、それを元に作文を書いたら地元の新聞社のコンテストで賞を貰った。先生が褒めた。親も褒めた。それから活動をするようになって、いろいろやっていたらテレビが取り上げてくれた。嬉しくなって、生き生きとして、勉強やスポーツも頑張れた。女子にもモテた。
家の中にもっと日記が残されていないだろうか? そんなことを思い付いて、先ほど押し入れを探したのが全ての間違いだった。日記はあった。だがそれには曽祖父が沖縄戦以前に兵隊に取られて他国に赴いた際に、同郷の者たちと共に罪のない人々を惨殺したことが赤裸々に綴られてあった。……
少年は椅子から立ち上がり、コーヒーをすすりながら窓の外の夜空を眺め、「ああ…」とつぶやいた。大きかった自分が小さく縮んでいくのを感じていた。「なかったことにしたい」という無意識の思いが湧き起こった。その思いが少年を突き動かし、そして少年にこう思わせた。「ひいおじいちゃんは認知症でデタラメを書いたんじゃないか」。するとたちまち胸の中の黒々としたモヤが晴れたような心地がした。「この世は明るく美しく、まるで希望に満ちて輝いている天上の楽園のようだ」と思われた。
少年は再び椅子に座り、片手で頬杖をつきながら読書にふけり、時おりコーヒーをすすって「ああ…」と舌鼓を打った。
少年の苦悩 ぽのか先輩 @kamoiiikamo
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