概要
毎朝の一輪を選んでいた人は――――どなたですの?
婚約した日の朝から、毎朝一輪の花が届きます。
伯爵令嬢ユーディットは、その一輪を押し花にして、日付と、丈と、棘のあるなしと、届いた時刻を一行ずつ書き留めてきました。七百二十輪。二年ぶんの帳面です。
婚約二周年の午後、婚約者クラウス様が薔薇の花束を抱えて訪ねてこられました。
「今朝は特別に、私が選んだ」
その晩、わたくしの手は腫れて、指が曲がりませんでした。わたくしは薔薇に触れられません。厨房の女中も、厩番も、この家の者なら誰でも知っています。
――では、七百二十輪のあいだ、一輪も薔薇を混ぜなかったのは、どなたですか。
「毎朝の花を選んでいたのは、どなたでしたの?」
夜明け前の通用口に立ってみて、わたくしは知りました。二年間、毎朝そこへ花を置いていったのは、北の温室の
伯爵令嬢ユーディットは、その一輪を押し花にして、日付と、丈と、棘のあるなしと、届いた時刻を一行ずつ書き留めてきました。七百二十輪。二年ぶんの帳面です。
婚約二周年の午後、婚約者クラウス様が薔薇の花束を抱えて訪ねてこられました。
「今朝は特別に、私が選んだ」
その晩、わたくしの手は腫れて、指が曲がりませんでした。わたくしは薔薇に触れられません。厨房の女中も、厩番も、この家の者なら誰でも知っています。
――では、七百二十輪のあいだ、一輪も薔薇を混ぜなかったのは、どなたですか。
「毎朝の花を選んでいたのは、どなたでしたの?」
夜明け前の通用口に立ってみて、わたくしは知りました。二年間、毎朝そこへ花を置いていったのは、北の温室の
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