冒頭が、深夜零時のかまどの前なんですよ。薪をくべて、湯を沸かして、寝ている酵母を起こしてやる。そこへ助けを求める声が飛び込んでくる。この入り方がとても好きでした。
主人公は死にたがりのおっさん。でも自殺はしないんです。自殺したら地獄行きで、先に逝った妻と子に会えなくなるから。だから死ねる場所を探しながら、律儀に生きている。この理屈が切なくて、なのにどこか可笑しくて、一気に好きになりました。
イベント屋として感心したのは、朝の開店から逆算された仕込みの時間割でした。深夜に火を起こし、その火を調理の竈と風呂釜に分け、粉をこね、発酵の合間に仮眠を取り、朝には焼き上げる。何かあれば全部が後ろに押していく。しかも「二日続けて休んだら近所の食卓が大変なことになる」から休めない。この人が動かないと、街の人の今日のパンが無いんです。段取りにちゃんと責任が乗っていて、ここが良かったです。
そして飯がうまそう。これは大事です。柔らかいパンに、ベーコンとチーズと玉ねぎ。ずるいです。
続き、楽しみにしています。