概要
郵便魔女はその風路に乗り、箒で町から町へ、国から国へ手紙を届ける。
だが、風標の灯が消え、中継塔が朽ち、村の名が台帳から消えれば、中央局は赤い判を押す。
配達不能。
クラリス・ヴェインは、その判が嫌いだった。
旧風路の残留魔力を読むことに長けた彼女は、中央局が「もう飛べない」と判断した空に、まだ箒が通れる細い流れを見つけることができた。
そしてある日、配達不能とされた異議申立書を届けたことで、郵便組合を追放された。
数か月後。
辺境の町外れで、クラリスは小さな私設郵便屋を開く。
看板には、ただ一文。
配達困難郵便、承ります。
中央局に見放された手紙が、今日も彼女の店へ持ち込まれる。
配達不能ではありません、少し、困難なだけです。
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- ★★★ Excellent!!!“配達不能”に灯をともす、追放郵便魔女の再出発ファンタジー
風路という魔力の道を箒で駆け、町から町へ手紙を届ける郵便魔女。
その華やかな職の裏で、風標が消え、塔が朽ち、地名が台帳から消えれば中央局は赤い判を押す――配達不能。
クラリス・ヴェインは、その言葉をどうしても受け入れられなかった。
旧風路の残留魔力を読むという、彼女だけの繊細な技術。
中央局が「もう飛べない」と判断した空に、まだ細い流れが残っていることを見つけられる特別な才能。
その才能ゆえに、彼女は異議申立書を届けたことで追放されてしまう。
数か月後、辺境でひっそりと開かれた私設郵便屋。
看板に書かれたのはただ一文――配達困難郵便、承ります。
中央局に見捨てられた手紙が、今日もクラリ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ファンタジーかくあるべし。優しさと厳しさの郵便物語
初っ端から、シンプルな文体でありつつも深い世界観を感じ取らせる文章力に惹き込まれます。
ストーリーにもキャラクターにも温かみとリアリティが両立しており、単に「読者をスカッとさせたいだけのやられ用悪役」といった薄い人物はほとんど登場しないのも好感度高いです。
連作短編の形式で、一つ一つのエピソードも素晴らしい完成度ですが、もう一つの軸になっている組織の動きもとても面白いです。「組織」「制度」というもののありよう、その功罪が明確なテーマのもとに重厚に描写されていて唸らされます。
もちろん心温まるヒューマンドラマとして読んでも一級品。
ファンタジーとはかくあるべしと思わされる逸品、全力でおすすめで…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しい人が優しい言葉だとは限らない。だからこの物語から目が離せない。
「慈善事業ではないのですが」
「受領確認書から離れてください。涙は紙に染みます」
「謝罪は不要です。手紙に被害がなければ」
一見すると、淡々と、冷たい台詞が並んでいる。
簡単に「できます」とは言わないし、「駄目」とも言わない。
クラリスは、まっすぐで熱い主人公とは対極にある。
それでも彼女から目が離せないのは、彼女が誰よりも仕事に真摯でひたむきで、人の声を拾い上げようとするから。一度「不能」と切り捨てられたものを、彼女だけが「困難なだけ」と諦めずに飛んで、届けてくれるから。
クラリスが運んでいるのは、ただの紙や荷物ではない。「ここに待っている人がいる」という揺るぎない事実である。
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