この作品の魅力は、「ナポリタンの歴史」を知ることではありません。「別れた人の話し方まで、料理と一緒に思い出してしまう」という、人の記憶のあり方を描いている点です。蘊蓄はそのための装置であり、最後まで読むと「なるほど、この話はナポリタンの話ではなく、記憶の話だったのか」と気づかされます。読後には、昭和の洋食屋でナポリタンを食べたくなるだけでなく、「そういえば昔、あの人がこんな話をしていたな」と、自分自身の記憶まで呼び起こされる。そんな余韻を持った作品でした。
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