朝霧の青を足元に

神無朔夜

朝霧の青を足元に

そこには彼女がいた。不思議なことに、瞬きの回数を増やすほど、僕の目にはっきりと映った。


彼女は、お気に入りの白いワンピースを着ていた。風のない夜に、裾をひらひらさせて立っている。


何で笑ってるの―― 自分の喉から出た言葉は、今にも崩れそうなほどに震えていた。


彼女が寄ってきた。僕の前で膝をつき、まっすぐに僕と視線を絡めた。


僕も笑い返そうとして、一度顔を下に向けた。水たまりに映った僕の顔は歪んで醜かった。きっと、水が揺れ動いているせいだ。


もう一度顔を上げた。彼女の透き通った肌が僕の髪にそっと触れた。真夏に冷凍庫を開けた時みたいな気分がした。


それと同時に、朝霧のような、少し青臭い香りが僕の鼻腔をくすぐった。


僕が手を伸ばしたら彼女は小さく笑って僕から離れた。僕の手はただ虚しく空を切った。




僕は瞬きを繰り返した。さっきははっきりと見えたのに。今は彼女は薄く広がっていた。


僕は腕で必死に目を擦った。


待って。行かないで。




最期に見えた彼女は、親指と人差し指の先を重ねていた。小さく舌を出すというおまけ付きで。


顔を上に向けた。僕の目に映ったのは、暗闇に浮かぶ無数の光だけだった。


僕は立ち上がり、手のひらに残った青い匂いを振り払うように、その青を足元に置いて歩き出した。

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朝霧の青を足元に 神無朔夜 @sakuya_0707

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