【第二章ー完 柳川への凱旋 】第25話:義星の帰還

京(きょう)へ戻(もど)った宗茂(むねしげ)の前(まえ)に、徳川(とくがわ)の使者(ししゃ)が現(あらわ)れる。家康(いえやす)からと告(つ)げられた金(きん)の文箱(ふばこ)には、旧領(きゅうりょう)・柳川(やながわ)への再任用(さいにんよう)と、大名(だいみょう)への復帰(ふっき)を示唆(しさ)する重々(おもおも)しい書状(しょじょう)が納(おさ)められていた。

​ 宗茂(むねしげ)はそれを見つめる。かつて関ヶ原(せきがはら)の夜(よる)に見(み)た星(ほし)と、同(おな)じ冷(つめ)たい光(ひかり)が彼(かれ)の瞳(ひとみ)の奥(おく)で揺(ゆ)れる。

​ 「殿(との)、いよいよ……」

 若侍(わかざむらい)が息(いき)を呑(の)む。宗茂(むねしげ)は静(しず)かに書状(しょじょう)を閉(と)じた。彼(かれ)が探(さが)していたのは、領地(りょうち)という名声(めいせい)ではない。己(おのれ)の流(なが)した血(ち)と、去(さ)った家臣(かしん)たちの魂(たましい)が眠(ねむ)る地(ち)での、真(ま)の決着(けっちゃく)であった。

​ 嵐(あらし)は去(さ)った。だが、遠(とお)く離(はな)れた柳川(やながわ)の空(そら)から、潮(しお)の香(かお)りが懐(なつ)かしく漂(ただよ)ってくるような気(き)がした。

​ 宗茂(むねしげ)は立(た)ち上(あ)がる。その背(せ)に、失(うしな)ったはずの藍色(あいいろ)の旗(はた)が翻(ひるがえ)る幻(まぼろし)を、誰も《だれも》が見(み)た気(き)がした。物語(ものがたり)は、柳川(やながわ)への帰還(きかん)という、最後(さいご)にして至高(しこう)の大詰(おおづめ)へ向かおうとしていた。


【第2章・了】

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『柳川の義星 ―立花宗茂、不屈の魂―』 琥珀 @kohaku_novel

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