静かに始まる物語ほど、読み終えたあとに深く響く作品舞台は火星のテラフォーミング計画の現場「何が起きるか」よりも、「この人がどんなふうに変わっていくか」を、説明的にならずに見せてくれる物語です。設定にも誠実で、「火星に生態系を根付かせるとはどういうことか」という問いが、物語の奥にしっかり流れています。そしてその問いが、ある一人の人間の感覚や選択にまで静かに入り込んでいくところが印象的でした。語りすぎない分、読後にじわりと残るものがあります。余韻の残る物語が好きな方に、触れてほしい作品です。
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