概要
塩素の匂いと、夏のはじまり。アスファルトの熱を追い越して恋が走り出す
六月の湿った空気、校舎を見下ろす放課後の土手。
体育委員の仕事を終えた私は、野球部の練習を終えて寝転ぶ幼馴染の隣に腰を下ろす。
刈り取られたばかりの草の匂い。アスファルトの熱。
いつもと変わらない、退屈で、それでいて宝物のような日常の風景。
けれど、風が運んできたプールの塩素の匂いが、彼の体温の匂いを追い越した瞬間。
私の胸の奥で、重い石が転がったような音がした。
幼馴染の首筋、少し低い声、無防備なあくび。
知っていたはずのすべてが、プールの底に沈んだ青色のなかで、バラバラに崩れていく。
――これは、真新しい水飛沫が上がる前の、ほんの一瞬。
世界の音が遠のき、私の体温が太陽に近づいた、ある夏の日の記憶。
体育委員の仕事を終えた私は、野球部の練習を終えて寝転ぶ幼馴染の隣に腰を下ろす。
刈り取られたばかりの草の匂い。アスファルトの熱。
いつもと変わらない、退屈で、それでいて宝物のような日常の風景。
けれど、風が運んできたプールの塩素の匂いが、彼の体温の匂いを追い越した瞬間。
私の胸の奥で、重い石が転がったような音がした。
幼馴染の首筋、少し低い声、無防備なあくび。
知っていたはずのすべてが、プールの底に沈んだ青色のなかで、バラバラに崩れていく。
――これは、真新しい水飛沫が上がる前の、ほんの一瞬。
世界の音が遠のき、私の体温が太陽に近づいた、ある夏の日の記憶。