概要
三百年つづくこの平和は、ひとりの王の死の上に築かれている。
人間は記憶を通じて人間になる。たとえそれが、己を切り裂く残酷な悲劇であったとしても。
「ドラノエリ」――平和が、あなたと共にあらんことを。
誰もがそう挨拶を交わす国、フィデルモイア。三百年のあいだ、戦も飢えも知らぬ地上の楽園。
だが、その平穏は、遠い昔に喪われた一人の気高き王の上に築かれていた。
王宮の最下層で床を掃いてきた少年レオナルトは、ある日、その玉座に座ることになる。
王冠に触れた瞬間、知るはずのない記憶が、自分自身の痛みとして流れ込む。見たはずのない闇。喉に流れ込む、冷たい水の感覚――。
やがて彼は、次の王を選ぶ『第十回王位継承戦』へと巻き込まれてゆく。
なぜ、この国の民は、涙の理由さえ思い出せないのか。
なぜ、王はただ一人、こんなにも早く老いてゆくのか。
そして――あの王冠に刻ま
「ドラノエリ」――平和が、あなたと共にあらんことを。
誰もがそう挨拶を交わす国、フィデルモイア。三百年のあいだ、戦も飢えも知らぬ地上の楽園。
だが、その平穏は、遠い昔に喪われた一人の気高き王の上に築かれていた。
王宮の最下層で床を掃いてきた少年レオナルトは、ある日、その玉座に座ることになる。
王冠に触れた瞬間、知るはずのない記憶が、自分自身の痛みとして流れ込む。見たはずのない闇。喉に流れ込む、冷たい水の感覚――。
やがて彼は、次の王を選ぶ『第十回王位継承戦』へと巻き込まれてゆく。
なぜ、この国の民は、涙の理由さえ思い出せないのか。
なぜ、王はただ一人、こんなにも早く老いてゆくのか。
そして――あの王冠に刻ま