またね、大好き!

縞間かおる

<これで全部>

 半ば恋に恋してたあの頃……

 卒業式が終わって、その足で旅立つと言う彼と……

 学校の近くの公園の前の道で

 ドラマか少女マンガのワンシーンの様に背中合わせになって

「じゃあ!」

 とお互いに反対方向へ歩き出した。


 私はやっぱり途中で振り返って

 涙で彼の姿がぼやけてしまったけど……

 あれは……本当に悲しかったのかなあ……


 今、思い返すとちょっぴり苦くて……

 文字通り“苦笑”してしまう。


 あれから私には色んな事があった。

 彼もきっとそうだと思う。

 ふふ!

 だってさ!

 手が触れるのだってドキドキしていたあの頃だもん!

 一番触れ合ったのがお別れの時の背中合わせだよ!

 純情過ぎて居たたまれないよぉ!

 それが今じゃ……お互いが付いちゃってさ!


 不貞のダンナと別れて保育士に復職した私と……

 奥様と死別し、忘れ形見のつむぎちゃんとこの街へ戻って来た彼……


 保育園でバッタリ出会った時……彼がとても大人びて見えたのは……きっと辛い影を帯びていたからなんだろうね。

 私は……たぶん、すっかり荒んでたんだろうね。

 彼、私の事、分んなかったから……


 無理も無いか!

 復職した最初の頃は……

 私の顔を見て泣き出す乳幼児が続出したくらいだから。


 それでもね……

 “職員”と“父兄”の間柄だから、あまり大っぴらにはできなかったけど……

 彼とのお付き合いを“飲み友達”から再開して、あれこれ話をする様になって

 私は変わった。

 周りから

愛優美あゆみ先生!  最近変わったよね!」って言われるくらいに。

 彼も……きっと変わってくれたんだと信じたい!

 うん!

 信じたい!!

 亡くなった奥様には申し訳ないけど……

 私、彼と紬ちゃんに恋してしまったから!


 彼と逢う日は嬉しさと切なさのマリアージュで……

 ついついお酒も進んじゃうんだけど

 今の所、一線は越えていない。

 だって、私、紬ちゃんにも恋してるんだから!

 彼女の事は何時いかなる時でも

 絶対に忘れない!!

 だから私達が飲みに行っている時、彼のお母さんの所に居る紬ちゃんの事を申し訳なく思うし……

 園では……紬ちゃんの事を“贔屓しない様にする”のに必死だ。



 そんなある日……彼は私が注いだビールグラスをコトリ! と置いて居ずまいを正したの!


「明日、紬を連れて亡くなった女房の実家へ行くんだ。紬も来年は小学校だから、今後の事もあるし……」


 こう言われて私……自分の恋の終わりを悟ったから、薄いため息で涙を押し隠して“保育士の私”に戻ったの。


「保育園を退園するなら早めに退園届を出さないと、ひと月余計に保育料を取られちゃうわよ」

 そしたらカレはかぶりを振ってこう言ったの!


「紬は小学校へ上がる迄は今の保育園でお世話になるよ。そうじゃ無くて……明日、実家へ行くのはけじめを付ける為なんだ!」


「けじめって?」


 私、本当に意味が分からなかったから聞き返したんだけど、彼、物凄く真剣な顔になって私の手を取ったの!


「オレ! 一所懸命に働くから!! 紬の為に、しばらく保育士を休職してくれないか?!」


 一瞬、意味が飲み込めなかったけど……次の瞬間、私は大泣きしてた。


 そして翌日、私、彼と紬ちゃんのお見送りに行ったの。


 満面の笑顔で私に両手を振る紬ちゃんと……

 紬ちゃんを抱っこして「じゃあ! 行って来る!」ってウィンクする彼に

 私、大声で叫んでた。


「またね! 大好き!!」って!!




 

                        おしまい



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またね、大好き! 縞間かおる @kurosirokaede

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